取引相手とちょっとトラブってて、相手からは「契約書のここに書いてるだろ」と言われているんですが、こんな小さい字でびっしり書かれた契約なんかいちいち読んでないし、ほんま腹立つわ!
お怒りですね。でも、契約書に押してあるのはどてらいさんのハンコですね。
残念だけど、「読んでない」は何の言い訳にもならないんです。
意外と多い、「そんな契約知らんわ」という主張
契約トラブルのときに意外と多いのが、
「そんな契約条件があるのを知らなかった。知ってたら条件変更を交渉するし、そもそも契約してないかもしれない。」
という言いぶんです。
何故、そんなことになったのかと背景を聞くと、以下のようなパターンに分かれます。
契約書に慣れてないパターン
小さい字で膨大な数の条項が書かれているし、そもそも馴染みのない語句がたくさん出てきて、読むのを途中であきらめてハンコを押した。
口頭説明を信じてしまったパターン
相手の担当者が口頭で契約内容を説明して、その説明に納得したので、契約書面はこまかく読まずにハンコを押した。
トラブルが起きて契約書を読み返したが、契約書に書いてある内容があの時の口頭説明と違うような気がする。当然、説明の録音もないし、説明を受けたのが相当昔なので記憶もあやふやで、証明できない。
相手方を信じすぎたパターン
上場会社である相手方が出してきた契約だし、ちゃんと弁護士とか法務が見ているだろうし、めちゃなことはしないだろうと信じていた。
こちらとしては上場会社と取引できる喜びの中、相手の気が変わらないうちに契約してしまいたいという思いが強く、契約書を読まずにハンコを押した。
裁判所では通用しないその言いぶん
トラブルが泥沼化して、裁判になったときに、
「契約書は読んでないしそんな契約条項は知らない」
という言いぶんはまず裁判所には通用しません。
例外としては、相手を監禁したり、脅迫したりしてむりやりハンコを押させたという事実が認定された場合と、企業と一般消費者との契約において消費者保護の観点で認められる場合くらいです。
いわゆる事業者同士(個人事業者を含みます)のビジネス契約の場合は、中身を読まずに契約する(ハンコを押す)なんてありえないと考えます。
焦らされた時には
契約書をしっかり読んで、必要な交渉をして、内容に納得してハンコを押す。という理想のプロセスを経るためには、当然に一定の時間が必要です。
しかし、その時間的な部分が契約交渉のネックになりがちです。
「早く契約してください。もしいついつまでにハンコを押してくれなければ、縁がなかったとして他にオファーしますよ。」という趣旨でバイアスがかかってくるのが普通です。一種の交渉戦略としてそのような作戦をとってくる場合もあります。
そうなると、時間外や休日を駆使して検討のスピードを速めるとか、専門家に検討を依頼するとかの対応を進めていく必要がありますが、そうはいってもどこか限界があると思います。
ということで、ここで一つのせめぎあいがあるわけですが、当方が精一杯頑張っているのになおも強硬に焦らせてくる相手ってたまにいますよね。そのような相手はちょっと要注意かもしれません。
そのような相手方は、将来取引上のトラブルが生じたときに、強硬に自己の主張を押し付けてくる相手になる可能性が高いといえます。
そのような交渉姿勢に相手方の本性が見えるのだと思います。今後の取引の仕方、付き合い方を再考したり、そもそも取引相手として相応しいかという観点で見直す必要があるかもしれません。
ちゃんと話ができる相手と取引したいですね。
ハンコの重みを理解しました。